· 時期の見極め · 10 分で読めます

第3話

「そのタイミングを、どう判断すればよいでしょうか」

その話が来た時期は、あなたが選んだものでしたか

「近々、九州エリアにも支店を出そうと思っているのですが、 そのタイミングを、どのように判断すればよいでしょうか」

糸島の自宅兼オフィスで Zoom でコンサルティングをしていた時に、関東に本社を置く住宅関連メーカーの社長から出てきたご質問でした。

経営者の方から、実際こういうご相談をいただくことがあります。

支店を出す。新商品を出す。本社を移す。人を増やす。

どれも、やること自体はもう決まっています。決まっていないのは、いつやるかだけです。

このときの私の答えは、期待されていたものとは違いました。

今年は、新しい店を出すよりも、内部を固めることに専念されたほうがいいと思います、とお伝えしました。

チャンスが来ることと、それが動く時期であることは、別です

チャンスが来たら、すかさず動け。

よく言われることですし、多くの場合は正しいと思います。迷っているうちに機を逃した、という話は経営の現場に山ほどあります。

ただ、ここには一つ、見落とされやすいことがあります。

チャンスが来ることと、それがあなたにとって動く時期であることは、別の話だということです。

そして厄介なのは、良いことが重なっているときほど、この二つの区別がつかなくなることです。

うまくいっている、という実感が、立ち止まる理由を消してしまうからです。

これは私自身が、独立したときに経験しました。

準備はしていました。時期だけが、自分のものではありませんでした

いずれは会社を辞めて、自分でビジネスをやりたいと思っていました。

きっかけは二つあります。

一つは、外国映画の買い付けで、日本における韓国映画の興行記録を塗り替える仕事をしたことです。あれを超える仕事は、もうできないのではないか。そう感じてしまいました。

もう一つは、邦画の制作部門に異動になったあとのことです。残業が非常に多い職場でした。ある作品の外部スタッフが、34、5歳の若さで、編集作業の最中に心臓発作で亡くなりました。

協力会社の社長さんは悲痛な表情をされていました。

この仕事を、50代、60代まで続けられるわけではない。

そう思って、準備を始めました。

自分なりの基準も、持っていました

スポーツ雑誌の元編集者から独立された方から、こんな助言をいただいていました。

副業の収入が本業の年収の半分、できれば三分の二くらいになったら、独立を考えてもいい。

納得のいく基準だと思いました。だから副業を始め、その水準を目指していました。

準備はしていたのです。何をやるかも、いつ頃かも、自分なりに描いていました。

ところが、時期のほうが先に来ました

ある日、アメリカの親会社が、当時大手広告代理店の子会社だった私たちの会社を買収する、という話が降ってきました。

今後、日本映画の制作も、外国映画の買い付けもしない。

自分の居場所がなくなったな、と思いました。

ただ、会社都合ということで、勤続年数や立場に応じた早期退職の積み増し金が出るという話がありました。希望者は人事部で提示を受けられる、と。

当時の人事課長のところへ、話を聞きに行きました。

提示されたのは、その頃の私の年収の二倍を超える金額でした。

正直に言えば、悪くないな、と思いました。

人事課長は私がどういう表情をするのか観察をしていました。私ははあえてニコリともせず、黙ってうなずきました。

やりたいことは決まっていた。準備もしていた。そこへ、予定より早く、しかもお土産つきで話がやってきた。

幸運としか思えませんでした。

年収二年分を、一度に手にして

しばらくは、あくせく働かなくてもいい。

そう思った瞬間に、自由になった気がしました。

もちろん、漠然とした不安はありました。それでも、その不安を上回る何かのほうが強かったのだと思います。

ビジネスクラスで世界一周をしました。

すぐに飲みもしない高価なワインを、買いあさりました。

飲むためではなく、集めていたのだと思います。当時の自分にとっては、明らかに身分不相応な買い物でした。

いま振り返れば、これは判断が緩んでいる人の行動です。

ただ、その渦中にいる本人には、そう見えません。うまくいっている、としか感じていませんでした。

そして、住む場所も変えました

当時は東京の世田谷区に住んでいて、毎日、山手線の満員電車に乗る生活でした。

海の近くに住みたい、と思いました。生まれ故郷が神戸なので、その感覚が残っていたのだと思います。

横浜でいろいろ探して、金沢区に賃貸マンションを見つけました。

ベランダから、山と海が見えました。

神戸とよく似た風景だったことに気づいたのは、しばらく経ってからです。

秋晴れの朝、ベランダから海を見て、そして鳥の鳴き声が聞こえる山の方を見ていたら、私が高校まで育った神戸の実家のベランダから見る風景と相似形だったのです。

会社を辞めるという人生でいちばん不安定な変化と、住む場所を変えるという変化を、私は同じ年に重ねていました。

その後に起きたこと

引っ越してから、それまでなかった花粉症になりました。

人生の張り合いのようなものが、薄れていきました。何かをしたいという気持ちが、うまく立ち上がってこない。

そして、海外の事業に関わる話で、大きな判断を誤りました。この件は、前回書いた通りです。

当時の私は、これらを全部、別々の出来事だと思っていました。

体調は体調。気持ちは気持ち。投資は投資。

つながっているとは、考えもしませんでした。

後になって気学を本格的に学び、ようやく分かったことがあります。

ばらばらに見えていたものは、同じ時期に起きていました。

やりたいことは決まっていた。準備もしていた。基準まで持っていた。

けれど、始める時期だけは、自分のものではありませんでした。

あのときの引っ越しについては、方位という観点からも読めるのですが、それはまた別の回に書きます。

攻める時期と、整える時期があります

九星気学は、「九つの星」と書きます。

その名の通り、九年の周期と、九か月の周期で、その人がいまどのあたりにいるかを見ていきます。

大きく言えば、時期は二つに分かれます。

攻める時期にやること

運気が強い時期は、こういうことに向いています。

フットワークを軽くする。営業やPRを強める。遠くまで足を伸ばす。多店舗を展開する。新規事業に乗り出す。

外へ、広げていく方向の一手です。

整える時期にやること

一方で、整える時期はこうなります。

既存のお客様の満足度を上げる。従業員のスキルを上げる。業務を効率化し、マニュアルを整える。

内へ、固めていく方向の一手です。

ここで強調しておきたいことがあります。

整える時期は、何もしない時期ではありません。

攻めるのも、整えるのも、どちらも経営者が主体的に選ぶ一手です。今は攻めよう、この時期は固めよう。そう決めることであって、待つことではありません。

前に書いた「攻めの開運学」も、同じ意味です。攻めるとは、誰かと戦うことではなく、待つのではなく自分から動くこと。整える時期に内側を固めるのも、立派に攻めています。

頂点の、すぐ次に来るもの

気学の周期には、面白い構造があります。

もっとも勢いが強く、目立つ場所に立つ時期があります。頭脳が冴え、周りの状況がよく見え、打つ手が次々に当たる。好調そのものに感じられる時期です。

ところが、その一つ先には、落とし穴のような時期が待っています。

順番として、そうなっているのです。

だから、良いことが重なったとき、読み方は二つあります。

流れに乗っているので、このまま続くと読むこともできる。

あるいは、ここがピークなので、これから反転すると読むこともできる。

どちらが正しいかは、その人がいまどのサイクルにいるかで変わります。

大事なのは、当たるかどうかではありません。

自分が9つのサイクルのいまどこにいるのかを、知っているかどうかです。

私に起きていたこと

あの頃の私に当てはめると、話は単純でした。

良いことが重なっていました。予定より早く独立できて、まとまった資金も入った。

けれど私は、自分がどのサイクルにいるかを知りませんでした。

知らないまま、そこにいくつもの変化を重ねました。仕事を辞め、住む場所を変え、大きな買い物をし、新しい事業の話に乗った。

一つひとつは、それぞれ理由のある判断だったと思います。

重ねてよい時期だったかどうかを、確かめていなかっただけです。

だから、支店の話にはこうお答えしました

冒頭の経営者の方に戻ります。

新しいエリアに支店を出したい。タイミングをどう判断すればいいか。

経営者の生年月日から、その方がいまどのサイクルにいるかを拝見しました。

その年は、内へ固めることに向いた時期でした。

ですので、こうお伝えしました。

今年は新しい店を出すよりも、組織の内部を固めることに専念されてはいかがでしょうか。これまで買ってくださったお客様の満足度を上げること。商品そのものの質を上げること。

支店の話をやめてください、とは言っていません。

今年やるべきことが、別にあるという話です。

そして、内側が固まっていない状態で外に広げると、どうなるか。新しい店に人を割いた分、既存の現場が薄くなる。教育が追いつかない。品質にばらつきが出る。

広げること自体が悪いのではありません。順番の問題です。

その後、この会社が実際に選ばれたのは、支店ではありませんでした。

本社から遠隔で運営できるショールームをつくる、という形です。

コロナ禍が来たのは、そのあとでした。

移動も、来店も、止まりました。もしあのとき新しい支店を出し、そこに人を配置していたら、どうなっていたか。考えると、少し怖くなります。

誤解のないように書いておきますが、私がその後の環境を読んでいたわけではありません。そんなことは読めません。

ただ、外へ広げるのではなく内を固める、という判断が、結果としてその後の状況に合っていた。それだけのことだと思っています。

ご相談を受けた方すべてのその後を、存じ上げているわけではありませんし、何がどれだけ効いたのかも分かりません。

ただ一つ言えるのは、あのとき問いが変わったということです。支店を出すかどうか、ではなく、今年やるべきことは何か。

そこから先は、その方が決めて、その方が動かれました。

その話が来た時期は、あなたが選んだものでしたか。

それとも、向こうからやってきたものでしたか。

いま自分がどのサイクルにいるのか。それを知っているだけで、同じ一手でも出す時期が変わります。

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    よくある質問

    整える時期は、何もしないほうがいいのですか

    いいえ、やることが変わるだけです。広げるより整える。表に出るより仕込む。人を増やすより、いまいる人との関係を整える。どれも主体的な一手であって、待つこととは違います。むしろ、整える時期に何もせずに過ごしてしまうほうが、次の攻める時期に力が出ません。

    攻める時期に、動けなかったらどうなりますか

    取り返しがつかない、ということはありません。周期は巡ってくるからです。ただ、次の同じ時期まで数年数か月かかるのは事実です。ですので、動ける時期が来たときに動けるよう、その前の時期に準備しておくという考え方になります。時期を読む一番の実利は、当てることではなく、備えられることだと思っています。

    社長個人の時期と、会社の時期は違うのですか

    別々に見ることができます。ただ、規模の小さい会社ほど、経営者個人の判断が会社そのものを動かします。ですので、まずは経営者ご自身がどのサイクルにいるかを見ることが多いです。組織が大きくなり、判断する人が増えてくると、見るべきものも変わってきます。

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