· 方位・移転・場 · 11 分で読めます

第4話

「引っ越しを考えているのですが、方位は見たほうがいいですか」

方位は、動いたあとに調べるものではありません

「引っ越しを考えているのですが、 方位というのは、見たほうがいいものなんでしょうか」

経営者の方から、こういうご相談をいただくことがあります。

半信半疑、という表情をされていることが多いです。まったく信じていないわけでもないし、全面的に信じているわけでもない。ただ、大きな決断の前に一応聞いておきたい。

その距離感は、正しいと思います。

私自身、かつてはまったく見ていませんでしたし、そのことで大きな代償を払いました。

人は、悪いことが起きてから調べ始めます

方位が悪いと、悪いことが起きる。

方位という言葉から、多くの方が思い浮かべるのはこれだと思います。そして、だからこそ気味が悪いとも感じる。

ただ、実際に起きていることは、少し違います。

悪いことが起きたかどうかは、後からしか分かりません。

そして人は、悪いことが起きてから、調べ始めます。

あのとき動いたのがまずかったのだろうか。あの方角がいけなかったのだろうか。何が原因だったのだろうか。

順番が、逆になっているのです。

これを私は、自分でやりました。師匠との約束を破って、です。

海の見える場所に住みたい、と思いました

私は神戸で育ちました。

父が港湾建設業の会社をやっていて、小さい頃から週末になると、父と海釣りに行っていました。

兵庫の防波堤や、須磨の海づり公園。波止からのサビキ釣りでアジを狙い、時期によってはサバやタチウオが上がりました。須磨で投げ釣りをすれば、キスが釣れました。

暗いうちから準備をして、日の出の前後には海に出ています。そして午後三時には引き上げる。夕方になると国道の渋滞がひどくなるので、その前に帰るのが決まりでした。

釣りをしている間、父はよく話をしました。世の中をどう見ているか。政治のこと。国際情勢のこと。どの国がどこにあって、だから何が起きるのか。

小学生の子どもに聞かせる話ではないと思うのですが、私のほうも興味があったので、黙って聞いていました。

三人兄弟の長男ですが、父も、私も、弟二人も、全員が一級船舶免許を持っています。そのくらい、海が身近な家でした。

ですから、海が好きだったことに理屈はありません。単に、好きだったのです。

会社を辞めた年に、海の近くへ移りました

前回書いた通り、会社が買収されて、私は予定より早く独立することになりました。

当時は東京の世田谷区に住んでいて、毎日、満員電車に乗る生活でした。

海の近くに住みたい。

そう思って、横浜の金沢区に部屋を借りました。ベランダから山と海が見える、神戸によく似た場所です。

このとき、方位という発想は、私にはまったくありませんでした。

村山幸徳先生の講義には、年末に一度だけ出ていました。翌年の世の中の流れと、九つの星それぞれの運勢を聞く会です。ただ、当時の私にとっては、年に一度の楽しみのようなもので、占いの一種だと思っていました。

方位を見て動く、という考え方があること自体、知りませんでした。

その後に起きたこと

引っ越してから、それまでなかった花粉症になりました。

生きる気力のようなものが、薄れていきました。何かをやりたいという気持ちが、うまく立ち上がってこない。

そして、海外の事業に関わる話で、大きな判断を誤りました。

当時の私は、これらを全部、別々の出来事だと思っていました。

学び始めて、遡ってしまいました

しばらくして、私は気学を本格的に学ぶことにしました。年に一度の講義ではなく、体系として学びたいと思ったのです。

入門のところで、避けるべき動き方がある、ということを学びました。

そのとき、ふと思ったのです。

ひょっとしたら、あのときは。

講義が終わったのは、午後三時半か四時頃でした。私はそのまま新宿の喫茶店に入りました。家に帰るまで待てませんでした。先生のところで出している手帳を開けば、調べられます。

世田谷から金沢区へ移った、あの年、あの方角を。

ああ……

やっちゃったな。

それが、いちばん近い言葉だと思います。

方位を選ばなかったことへの後悔ではありません。もう少し早く気学を本格的に学んでいれば、避けられた判断だったのに、という後悔です。

花粉症も、気力の減退も、投資の失敗も、別々の出来事ではありませんでした。

同じ根から出ていました。

私は、約束を破ってしまいました

村山先生は、繰り返しこう教えてくださっていました。

過去は問わない。遡って見に行かない。 未来をより良くするためにだけ使いなさい。

五時頃まで、その席にいました。そして夕方になるのを待って、近くの居酒屋に一人で入りました。

日本酒を頼みましたが、味は覚えていません。

頭の中で、同じことを何度も繰り返していました。もう少し早く学べばよかった。そしてもう一つ、先生との約束を破ってしまった、と。

私はその約束を、破ってしまいました。

気になったからです。何が原因だったのかを知りたかったからです。

おそらく、誰でもそうすると思います。だから、調べないでくださいとは申し上げません。

ただ、調べてどうなったかというと、何も変わりませんでした。

過ぎたことは過ぎたことで、そこにあるだけでした。

先生が言われていたのは、そういうことだったのだと思います。

過去に向けて使っても、何も動きません

なぜ、犯人探しが無意味なのか。

理由は単純です。

過去に受けた作用というのは、そう簡単には消えません。長い時間、残ります。消していく方法はあるのですが、それも過去をなかったことにする方法ではありません。

結局は、未来に向けて新しくプラスの原因を作っていくしかない。

だとすれば、遡って原因を特定したところで、そこから先に進む道は一つしかないのです。

だから、遡らなくていい。

動く前に使えば、できることが三つあります

では、何のために使うのか。

動く前であれば、選べます。

その時期に動かないほうがいいのであれば、やめることができます。

やめられないのであれば、時期をずらすことができます。

時期をずらせないのであれば、行き先を選び直すことができます。

やめる、ずらす、選び直す。

この三つは、動いてしまったあとでは一つも使えません。

方位を見るというのは、当てることではなく、選択肢を持っておくことだと思っています。

方位で見ているのは、方角だけではありません

もう一つ、誤解されやすいことがあります。

方位というと、方角の話だと思われがちですが、実際に見ているのは時期と方角の両方です。

同じ北へ動くのでも、いつ動くかで意味が変わります。年によっても、月によっても違いますし、その人によっても違う。

ですので、ご家族で引っ越しをされる場合には、ご家族全員の生年月日を拝見します。

同じ家に住んでいても、その方にとっての良い時期は、一人ひとり違うからです。

吉方位を取るとは、何をすることか

言葉だけ聞くと大げさですが、やることは単純です。

その方角へ移動して、その土地の気と水のエネルギーを取り込む。それだけです。

日の単位で見る場合であれば、一定の距離を移動して、向こうで喫茶店に入ってコーヒーを飲む。コンビニでパンやジュースを買って口にする。それで取り込んだことになります。

年の単位でやるのが、引っ越しです。

そちらで暮らし始めることで、その土地の水と気のエネルギーを、日々受け取っていく。

特別な儀式があるわけではありません。

すでに動いてしまった方へ

ここが、いちばん多くいただく質問だと思います。

正直に申し上げます。消すことはできません。

ただ、上から足していくことはできます。

汚れてしまった水に、きれいな水を注ぎ続けるようなものです。一度で澄むことはありませんが、注ぎ続ければ、少しずつ変わっていきます。

後から良い方位への移動を重ねていく。それが、唯一できることです。

だから、過去を調べても仕方がないのです。調べても調べなくても、やることは同じですから。

引っ越せない場合の方法もあります

持ち家がある。家族が多くて全員では動けない。そういう場合のために、別のやり方も考えられています。

私自身の例で説明します。

いま私は福岡県の糸島市に住んでいます。仮に、北が良い方角だったとしましょう。

糸島の北側にも土地はありますが、もっと遠くまで取ろうとすると、すぐに海に出てしまいます。その先は韓国です。

つまり、物理的に取りに行けない。

こういうとき、一度、反対の南へ行きます。そして、そこで一定の期間を過ごし、その土地の水と気を取り込みます。

期間が満ちたところで、自宅へ戻る。

戻る方角は、北です。

こうすることで、実質的に北へ引っ越したのと同じ効果を取ることができます。

取れないなら諦める、ではありません。取り方を変えるだけです。

妥協して動くくらいなら、動かずに待つ

ご相談を受けた方すべてのその後を、存じ上げているわけではありません。ですので、これは私が知り得た範囲の話です。

都心に住む女性経営者の方から、引っ越しのご相談を受けました。

ご自宅で水回りの事故を起こしてしまい、階下に被害が出て、賠償と、期限を切った退去を求められていました。

拝見すると、動くべき方角ははっきりしていました。しかもその年は、その方にとって、なかなか巡ってこない良い時期でもありました。

ただ、その方角にあたるのは、都心でも屈指の人気エリアでした。

物件が、出ませんでした

数日後、その方から連絡がありました。

「どこを探しても、条件に合う空き物件が、一つもないんです」

退去の期限は迫っています。

こういうとき、普通はこう言うと思います。

少し範囲を広げましょう。方位にこだわりすぎるのは現実的ではありません。せめて、悪くない方角にしましょう。

私は、そうは言いませんでした。

「妥協して動くくらいなら、動かずに待ちましょう」

理由があります。

中途半端な方角に妥協して動いてしまうと、良い作用も悪い作用も、どちらも取れなくなります。せっかくの、なかなか巡ってこない時期が、何も起きないまま過ぎてしまう。

それが、いちばんもったいない。

一定の距離の内側に、留まる

気学には、一定の距離までの移動は引っ越しと数えない、という考え方があります。

つまり、その範囲の内側であれば、いまの場所の状態を保ったまま、仮住まいとして過ごすことができます。

ですので、こうお伝えしました。

その範囲の内側で、ウィークリーマンションかマンスリーマンションを探してください。理想の物件が出るまで、そこで待ちましょう。

その方は、なるほど、という顔をされていました。

待つという選択肢があること自体を、考えたことがなかったのだと思います。

もう一つ、お伝えしたこと

ただし、と私は続けました。

避けてほしい物件があります、と。

今回の事故が起きた建物と、同じ管理会社が運営している物件です。

これは気学の話ではありません。

そのエリアは、同じ管理会社の物件が多い地域でした。もし次も同じ会社の物件を選べば、事故の記録が共有されていて、入居審査で跳ねられる可能性がある。そうなれば、待つどころではなくなります。

賃貸の業界がどう回っているか、という話です。

運気を整える前に、足元の現実を確保する。順番としては、そちらが先です。

数か月後

その方は、必要最低限の荷物だけを持って仮住まいに移り、残りは倉庫に預けました。

そして数か月後、希望していたエリアに物件が出ました。

何がどれだけ効いたのかは、正直なところ分かりません。

ただ、あのとき妥協せずに待つと決めたのは、その方です。

私が申し上げたのは、待つという選択肢がありますよ、ということだけでした。

あなたが次に動くとき、それは自分で選んだ時期と場所ですか。

それとも、動かざるを得なくなってからの判断ですか。

動く前であれば、やめる、ずらす、選び直す。この三つが使えます。

公式LINEでは、経営判断に使える時流の読み方をお届けしています。

公式LINEに登録する

    Share:

    よくある質問

    引っ越しは、必ず良い方角でないといけませんか

    そんなことはありません。仕事の都合でも、家族の事情でも、動かなければならないときはあります。方位を見る目的は、動きを縛ることではなく、選べるときに選ぶことです。選べない状況で無理に方角を優先すると、生活のほうが壊れます。順番としては、まず現実の必要があって、そのうえで選べる余地があるなら選ぶ。それだけのことです。

    会社の移転と、個人の引っ越しは同じ見方ですか

    基本的な考え方は同じですが、見る対象が変わります。個人であればご本人と、一緒に住むご家族。会社であれば、まず経営者ご自身を拝見します。規模の小さい会社ほど、経営者の状態が会社そのものを動かすからです。組織が大きくなると、見るべきものも変わってきます。

    すでに良くない方角へ動いてしまいました。どうすればいいですか

    消すことはできません。正直に申し上げます。ただ、後から良い方角への移動を重ねていくことで、上から足していくことはできます。汚れた水に、きれいな水を注ぎ続けるようなものです。そして、遡って何が悪かったのかを調べる必要はありません。調べても調べなくても、これから先にやることは変わらないからです。

    他の記事を読む

    記事一覧を見る »

    「表情が、柔和になったね」

    糸島に移ってから「表情が柔和になった」と言われるようになりました。なぜ福岡だったのか、景色で選んで凶方位だった一度目の引っ越しと、方角で選んだら海の見えない部屋になった二度目。糸島での暮らしと、九話目に寄せて。

    「何か、燃え尽き症候群のようになってしまって」

    目標を達成したあとで燃え尽きた、と打ち明けた友人に「おめでとうございます」と伝えた理由。師匠からいただいた名前と、告別式で聞こえた気がした「頼んだぞ」。次のステージは、規模ではなく役目が変わることだ、という話を書きました。

    「もうこれ以上は、1円も出さないで」

    師匠に「もうこれ以上は1円も出さないで」と言われた日のこと。撤退を迷うときに出したくなる「あと少し」は、前に進むためではなく取り返すためのお金です。見切りの判断と、共同事業の相手に感じた違和感について書きました。

    ブログ一覧に戻る